§2 スペクトル解析一般
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問 MEMにおいてラグの値を変えることはスペクトルにどのような影響をもたらしますか? |
0750 |
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答. MEMの本来の理論体系では,ラグは対象系の構造とは切り放して考えることができます.このとき,ラグは時系列データにみられる相関のうち,どの程度長い相関までをスペクトルに取り込むかということを指定し,いわばどの程度の“分解能”でスペクトルを計算するかの指定でもあります. |
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問 「MEMは任意性が強すぎて使えない」などという批判がありますが. |
0760 |
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答 この批判には2つの側面があると思われます.一つはラグを変えるとスペクトルが変化することを指した批判です.この批判については問0750で述べたとおりです.そもそもあるサンプリング間隔で測定された有限長のデータから,唯一のスペクトルが得られるという考え方自体,不合理なものです.もう一つの批判は具体的な数値計算において,ラグを変えて得たスペクトルが「似ても似つかない」ことに対する批判です.これはスペクトルの分解能の違いによるものであって,スペクトルそのものに問題があるのではありません. |
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問 「自分はPDP-11の時代からプログラムを組んでさまざまな解析を行ってきた.MEMも試したがラグを変えるとスペクトルが別物になってしまう」などと話される先生もいますが. |
0770 |
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答 「スペクトルが別物」ということの内容が問題です.問0750で述べたとおり,ラグをどのように取ってもスペクトルのトータルパワーは不変に保たれます.また,スペクトルの傾きも変わりません.その上でラグを大きくしていくと低周波数領域にピークが出現し(より長周期のモードを検出し),高周波数側にも多くのピークが出現します.ピークはより高く鋭くなります.ラグを大きくすることはスペクトルの分解能を上げることに対応しますから,このことを指して「スペクトルが別物」と見なすのはいかがと思います.ただ,むしろ本当にラグを変えてもトータルパワーと傾きが不変に保たれるようなスペクトルをご自身が組まれたプログラムで計算された上で「別物になってしまう」と判断されたのか,はなはだ疑問ではありますが. |
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問 なぜ,MEMについはさまざまな批判,ないし誤解があるのでしょうか? |
0780 |
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答 そのような批判・誤解の原因は2通りに分けられるようです.第一はMEMの理論構成にかかわるもの,第二は数値計算上の問題にかかわるものです. |
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問 MEMスペクトルとラグについて,最新の理解によればどのうように考えられますか? |
0785 |
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答 北海道大学の常盤野和男先生による公表予定の「MemCalcの理論」−有限長離散時系列の解析理論− によれば,MEMについて以下の諸点が既に明らかとされています.
また,MEMはARとも,またフィルター理論とも一切無関係であることも示されますが,その論述はAR「研究者」がMEMを自己流に解釈する余地のないものとなっています.この「MemCalcの理論」により,長年MEMにまとわりついてきた誤解・曲解の類が一掃され,その真に意味するところが明らかとなることが期待されます. |