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§3 MemCalc解析
§§3−5 MemCalcの計算精度について(その1)

問 MemCalcによるスペクトルの周波数特性の計算精度はどのように検証されていますか?

1290

答 MemCalcのPSDの計算精度は,MemCalcによって計算される解析結果を理論的解析結果と比較し,その再現性から検証されています.
 最初の例として,ローレンツ型時系列は,指数PSDに厳密にフーリエ変換されます.図1290-1(a-1)は, 

x
(
t ) = 1 / {a2 + (t - b)2}

a = 1.0,b = 10.0 の場合のローレンツ型時系列です.また,MemCalcによって計算されたMEM-PSDの両対数および片対数表示を,それぞれ,図1290-1(a-2),(a-3)に示します.図1290-1(a-3)のMEM-PSD曲線は,明らかに周波数に対して計算精度の限界で平坦化するまで指数的に減衰していることがわかります.さらに,MemCalcによって計算された指数スペクトルの傾きの値は 12.49であり,理論値 12.56に対してわずか 0.56 %の誤差です.
 二番目の例として,指数型時系列

x
( t ) = exp (- a | t | )

は,f -4のスペクトルの傾きを持つPSDに厳密にフーリエ変換されます.図1290-2(b-1)と1290-2(b-2)に,それぞれ a =1.0の指数型時系列とMemCalcによって計算されたMEM-PSDの両対数表示を示します.図1290-2(b-2)を見てわかるように,MemCalcの結果は,正確なPSDの結果を良く再現しています.
 三番目の例として,ガウス型時系列

x
( t ) = exp (- a t 2 )

は,−α f 2のスペクトルを持つPSDに厳密にフーリエ変換されます.図1290-3(c-1)にa =1.0のガウス型時系列,そして図1290-3(c-2)と1290-3(c-3)にそれぞれMemCalcによって計算されたMEM-PSDの両対数表示と片対数表示を示します.図1290-3(c-3)を見てわかるように,MemCalcの結果は,正確なPSDの形を,PSDが現在の計算の精度で決定される限界で平坦化するまで,良く再現しています.
 以上のようにMemCalcは,これらの理論的なPSDを再現することを可能にしました.MemCalcによって計算されたこのような結果は,他の時系列解析の方法によっては決して得られませんでした.


図1290-1 ローレンツ時系列とそのMEM-PSD.
(a)ローレンツ型時系列,(b)MEM-PSDの両対数表示,(c)MEM-PSDの片対数表示.

 

図1290-2 指数型時系列とそのMEM-PSD.
(a)指数型時系列,(b)両対数表示によるMEM-PSD.

 

図1290-3 ガウス型時系列とそのMEM-PSD.
(a)ガウス型時系列,(b)MEM-PSDの両対数表示,
(c)MEM-PSDの片対数表示.

問 周期時系列についてはPSDの周波数特性の計算精度は検証されていますか?

1300

答 図1300に,周期時系列の結果を示します.ここでは,3つの正弦函数の重ね合わせによって生成された周期時系列を用いて検証しています.3つの周期時系列のパラメータ値を表1300に示します.生成された時系列が図1300(a)に,そしてそのPSDを同図(b)に示します.PSDに見られるように,3つの離散的な鋭いピークが明確に観測されます.これらは,δ-函数として見なして差し支えありません.

  表1300 3周期モードに対するパラメータ.

Mode Period Amplitude Phase
1-st 90.0 10.0 30.0
2-nd 50.0 10.0 20.0
3-rd 30.0 10.0 10.0

 

図1300 周期的時系列に対するMEM-PSD.
(a)人工的に生成された周期的時系列,
(b)そのMEM-PSD(両対数表示).

問 パルス時系列についてはPSDの周波数特性の計算精度は検証されていますか?

1310

答 図1310に,パルス時系列の結果を示します.最上段のパルス時系列はモデル時系列であり,定数+ひとつのパルスです.定数値は1であり,100の高さのインパルスが時間点5に立っています.この時系列のPSDは,解析的に,インパルスによる定数+定数時系列による周波数ゼロでのδ-函数となります.図に見られるように,MemCalcの結果は,この解析的なPSDを本質的に再現しています.周波数ゼロにおけるδ-函数の振る舞いは,図の最下段にある3組の拡大図に非常によく示されています.PSDの一定値は,インパルスの密度に対応しており,周波数ゼロでのδ-函数の領域は,定数時系列のレベルに対応しています.この結果は驚くべきことであって,MemCalcの有用性を裏づける重要な結果です.

図1310 (a)モデル時系列 x(t)=1.0+100×δ(t-5) (t:時間),(b)モデル時系列のMEM-PSD,(c)MEM-PSDの低周波数領域の拡大図.


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